シリア難民の今を知る写真展

シリア難民の今を知る写真展

本写真展の舞台は中東の一国シリア。
古代文明発祥の地、またシルクロードの中継点として栄華を誇り、
歴史的に多くの国家や民族が興亡を繰り返してきた土地です。

そのシリアで内戦が始まったのは2011年のことです。
〝アラブの春(*1)〟の影響で、長く独裁政権下にあったシリアでも
民主化の気風が高まり、人々は政治への自由な参加を求めて民主化デモを起こしました。

しかしそれに対して政府が武力で弾圧を繰り返し、市民に死傷者が出ると、
民衆も武装して対抗するようになり武力衝突へと発展。
泥沼の内戦へと突入していきました。
国連はこの内戦を〝今世紀未曾有の人道危機〟と称し、
国際社会として解決の糸口を探ってきましたが、
現在も収束の気配がなく、状況はむしろ悪化の一途をたどっています。

2020年2月現在、この内戦によってかつてのシリアの人口2240万人のうち
50万人以上が死亡、550万人以上が難民となり、
国民全体の半数以上が住居や仕事を失っています。
現在もシリア北西部イドリブ県では、
政府軍とその協力者であるロシア軍による作戦で、多くの一般市民が犠牲になり、
この2カ月で国内避難民となった人々の数は100万人をこえ、
多くの子供が寒さや飢え、病気で命を落としています。
内戦の惨禍はこの瞬間も続いているのです。

本写真展では、2018年、2019年に
トルコ南部のシリア国境の街で撮影した写真40点を飾りました。
ここに登場する人々は、シリアから難民として逃れてきた人々です。
そのほとんどが難民キャンプではなく、
トルコ社会の中で独自のシリアコミュニティを形成して暮らしています。

言葉も民族も違うトルコで、職を得て働き、生活をするのは容易ではありません。
しかし人々は難民生活が長引くなか、
新しい土地に根を張ることを強く意識し始めています。
取材では、年々、シリア難民の子供たちがトルコ語を上手に話し、
トルコ人の友達と路上で遊んでいる姿を目にします。
小さい世代、若い世代からシリア難民は新しい土地に溶け込もうとしています。

〝難民〟と聞けば私たち日本人は悲惨さや困難さだけをイメージしがちです。
しかし、そうした部分だけでなく、彼らの暮らしには
私たちと同じように生き生きとした日常や喜び、ささやかな幸せがあります。
本写真展では、シリア難民が抱える複雑で多様な背景、
そして人間が何を求め、何を見出していきていくのかという普遍的な問いをこめました。
難民一人一人の大切な物語を知っていただき、
少しでも「シリア」や「難民」について思いを巡らせていただけたら幸いです。

*1 アラブ諸国を中心に2010年〜2012年ごろまで発生した大規模反政府運動

__________ドキュメンタリーフォトグラファー       小松由佳  
______________________(会場挨拶文より一部転載)