VOLVOX閉廊のご挨拶

VOLVOX閉廊のご挨拶

2022/03/31-03/31

地元作家による共同運営ギャラリー「アート・クラフト表現空間 VOLVOX」は、2012年10月のプレオープン企画展覧会『坂口久司(陶)・ダメム世津子(絵画)展』、11月の『カンタティモール上映会』を経て、2013年1月に運営会の全会員による企画グループ作品展『VOLVOX展』を開き、今日までの歩みを始めました。

スタート時とその後の数回の企画展覧会、イベントを除いては、貸ギャラリー形態での営業を基本としていたVOLVOXでしたが、空間を利用する作家、表現者の方々と展示内容や作品の見せ方、またDMデザインなど広報についても一緒に考えながら、一つひとつの展覧会やイベントを来場される皆様に楽しんで頂けるよう努めてまいりました。

「作り手たち自身による自由な表現の場が、街に開かれた親しみやすい空間として創られ、作品を通じて“顔の見える”ローカルコミュニケーションが積み重ねられる空間」

長々とこんなコンセプトを掲げましたのは、VOLVOX開設のきっかけになりましたのが、2011年の東日本大震災の津波と原発事故により、地域の営みやコミュニティが失われる様を目の当たりにしたことだったからです。

当たり前にあると思っていた平穏な日常が一瞬にして失われてしまったことで、それがいかに大切でかけがえの無いものであるかということに、あの時多くの日本人が気づきました。
また成長や発展ばかりを追い求め、またその結果として経済も文化も都会への集中を加速させてきたことへの反省を胸にしたことでもあったと思います。

そんな中でこのVOLVOXの空間が、芸術や工芸に携わる者として「何か自分たちに出来る良いこと」を始めないではいられなかった地元のアーティストたちが声を掛け合い、多くの人々の協力を得て、手作りで出来上がりました。

創作活動、表現活動の中での上昇志向や、より広くメジャーな場所へ発表の場を求める気持ちは、自然なことでもあり、けっして悪いことでもありませんが、商業主義や権威化が蔓延する世の中で、その風潮に流されて過度にそうなりがちなことは、やはり注意しなくてはいけないことです。本来作品を創る心は純真無垢であり、出来上がった喜びや感動を人と共有することは、ただただ楽しく素敵なことです。

それを自分たちのいるこの場所で、日々の普通の暮らしの中で分かち合えることが出来れば、私たちの人生は十分に豊かなものになるでしょう。

この度、老朽化した四天王会館と共に、開設から10年目の2022年3月末を以てVOLVOXは幕を閉じることになりましたが、この空間を運営してきた10年は、私たちにそのことを改めて確信させてくれました。そして多くの皆さまが共感し、集って頂けたことが最上の喜びです。これまで足を運んで頂き、親しみ、支えてくださった皆さまに、心より感謝申し上げます。長い間本当にありがとうございました。
この気持ちを胸に刻み、これからも私たちはそれぞれの作品制作に励んでいきたいと思っています。
出来上がった作品と共に、どうかまたどこかでお目にかかれますように!

2022年3月31日  アート・クラフト表現空間 VOLVOX 運営会一同

秋山 茂  池山琢馬  いとう えりこ
岩本忠美  大浦順子  岡林まち子
緒方直青  鬼木美保子 倉岡 雅
倉本 尚  阪井友子  坂口久司
須賀 忍  杉本千明  立岡茂
田中厚美  辻 長彦  辻 美穂
直魅    長尾 悟  濱田 稔
前田政綱  松岡浩二郎 松原 豊
村上基子  森下武司  油田陽一朗
横山欣司  横山雅子